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貸借コラム

ジモートシルシルさん

【大家さん必見】賃貸の修繕義務はどこまで?費用負担でモメないために

2025.10.30   貸借コラム   貸したい

清須市でアパート・マンションを経営されている大家さん、こんにちは!アシストです。

入居者さんから修繕の連絡が入るたび、また出費かと頭を抱え、この修理は本当に大家負担なのかと疑問に思うことはありませんか。修繕費は賃貸経営の収益に直結する問題です。曖昧な知識のままでは、本来払う必要のない費用を負担したり、入居者とのトラブルを招いたりしかねません。

この記事では、法律や国の指針に基づき、大家さんが自信を持って判断するための明確な線引きを解説します。

結論:賃貸物件の修繕義務は、原則として「大家さん」にあります

結論からお伝えしますと、賃貸物件で何かしらの修繕が必要になった場合、その義務を負うのは原則として「大家さん」です。

根拠は民法第606条「賃貸人の修繕義務」

その根拠となるのが、民法第606条です。少し硬い言葉ですが、このように定められています。

(賃貸人の修繕義務) 第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

これを分かりやすく言い換えると、「大家さんは、家賃をいただく対価として、入居者さんが契約通りに、安全で快適にその部屋を使える状態を維持する義務がありますよ」ということです。これを「使用収益させる義務」と呼びます。

例えば、

・給湯器が壊れてお湯が出ない
・雨漏りがして生活に支障がある
・備え付けのエアコンが動かない

といった状態は、入居者さんが「快適に住める状態」とは言えませんよね。このような場合、大家さんには速やかに修繕する義務が発生するのです。

【要注意】2020年民法改正でルールがより明確に!

さらに大家さんが知っておくべき重要な点として、2020年4月1日の民法改正があります。この改正により、修繕に関するルールがより具体的になり、対応を怠った際の大家さんのリスクが大きくなりました。

特に重要なポイントは以下の2つです。

入居者に「修繕権」が認められた
大家さんが必要な修繕をしてくれない時や、緊急の必要がある時には、入居者が自分で業者に修理を依頼し、その費用を後から大家さんに請求できることが明確になりました。
設備の不具合による「賃料の当然減額」
給湯器が壊れてお風呂が使えないなど、部屋の一部が使えなくなった場合、その使えない割合に応じて、交渉などをしなくても法律上当然に家賃が減額されることになりました。

つまり、「ちょっとくらい大丈夫だろう」「忙しいから後で対応しよう」といった対応が、予期せぬ費用負担(入居者が手配した高額な修理費)や、家賃収入の減少に直接つながってしまう可能性があるのです。

そのため、修繕義務の範囲を正しく理解し、入居者から連絡があった際に迅速かつ適切に対応することが、無用なトラブルや出費を防ぎ、結果的に大家さんご自身の安定した賃貸経営を守ることにつながります。

【一覧表で一目瞭然】これはどっち?場所・設備別の修繕費用負担ガイド

ここからが大家さんが一番知りたいポイントです。修繕の費用負担を判断する大きな分かれ目は、その原因が「①経年劣化や通常の使用によるもの」か、「②入居者の不注意や通常とは言えない使い方(故意・過失)によるもの」か、という点にあります。 この基準に沿って、具体的なケースを一覧表にまとめました。

原則【大家負担】となるもの(経年劣化・通常の使用による故障)

これらは、入居者さんが普通に生活していても自然と発生する劣化や故障です。建物の維持管理責任を負う大家さんの負担で修繕するのが原則となります。

設備・箇所 具体例 理由・補足
主要設備 給湯器、トイレ、換気扇、備え付けコンロの故障・不具合、大家さんが設置したエアコン 生活に必須のインフラ設備であり、経年による寿命が主な原因のため。入居者さんに過失がない限り、大家さんの負担です。
建物構造 雨漏り、壁のひび割れ、建付けの不具合(ドアや窓がきちんと閉まらない) 建物自体の維持管理は、所有者である大家さんの基本的な責任範囲です。
共用部分 廊下の電灯交換、集合ポストの破損、エレベーターのメンテナンス 入居者全員が使用する共用部分の維持管理費用は、大家さんが家賃収入の中から計画的に行うべきものです。
その他 給排水管の詰まり(※)、シロアリなどの害虫駆除、備え付け網戸の自然な劣化 建物全体に関わる問題や、入居者さんが原因でないものは大家さん負担です。
※入居者が異物を流した場合は除く。

【入居者負担】となる可能性が高いもの(故意・過失・通常でない使い方)

一方、入居者さんの「うっかり」や「間違った使い方」が原因で修繕が必要になった場合は、入居者さんにご負担いただくことになります。これは、入居者さんが負う「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」に違反した、と判断されるためです。(※善管注意義務=借りたものを善良な管理者として注意して扱う義務)

設備・箇所 具体例 理由・補足
不注意による破損 家具の移動でつけてしまった壁の穴や床の傷、子どもが割ってしまった窓ガラス 「うっかり」であっても、入居者さんの不注意が原因の破損は、入居者さんの責任となります。
清掃不足による劣化 掃除を怠ったことによる換気扇の油汚れや機能不全、浴室の頑固なカビ 日常的な清掃を怠ったことで発生した汚れや故障は、入居者さんが行うべき管理を怠ったと見なされます。
用法違反 禁煙物件での喫煙による壁紙の黄ばみ・臭い、ペット不可物件での飼育による傷や臭い 契約内容に違反した使い方による損耗は、当然ながら入居者さんの負担です。原状回復費用も通常より高額になるケースがあります。
その他 飲み物などをこぼして放置した床のシミ、鍵の紛失による交換費用 通常の使用や管理をしていれば防げたはずの損耗・紛失は、入居者さんにご負担いただくのが一般的です。

判断に迷う!グレーゾーンの考え方(電球・網戸・パッキンなど)

「これはどっちだろう…?」と大家さんが特に判断に迷うのが、これら細かい部分ではないでしょうか。考え方のポイントを解説します。

消耗品(電球、照明のリモコン電池など)
入居中の交換は原則として入居者負担です。しかし、入居時点で切れている場合は、大家さんの負担で交換します。入居前の最終チェックで確認し、不備なく引き渡しましょう。
小規模な修繕(蛇口のパッキン交換、網戸の破れなど)
これは最も判断が分かれる部分です。原則に立ち返れば、自然に劣化したパッキンや網戸の修繕は大家さん負担となります。しかし、賃貸借契約書に「電球、パッキン等の小規模な修繕は借主の負担とする」といった「特約」があれば、入居者負担とすることができます。契約書の内容が非常に重要になる部分です。

判断の拠り所 

もし迷ったら、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしましょう。このガイドラインには、経年劣化や通常損耗の考え方、具体的な事例が詳しく解説されています。入居者さんに説明する際にも「ガイドラインではこのように考えられています」と示すことで、客観的な根拠となり、スムーズな交渉につながります。

「小修繕は入居者負担」の特約はどこまで有効?

多くの大家さんが、賃貸借契約書に「小規模な修繕は入居者の負担とする」といった特約を盛り込んでいるかと思います。これにより、細々とした修繕対応の手間やコストを削減したいと考えるのは当然のことです。

ここで注意したいのが、「契約書に書いてあれば、何でも有効になるわけではない」ということです。

消費者契約法などにより、入居者(消費者)に一方的に不利な契約条項は、たとえ署名・捺印があったとしても「無効」と判断される可能性があります。特約を正しく設定しなければ、いざという時に「この特約は無効です」と指摘され、結局大家さん負担になってしまうリスクがあるのです。 では、どのような特約なら有効と認められるのでしょうか。過去の判例などから、有効になるためのポイントが見えてきます。

特約が有効になるための3つの条件

裁判所などが特約の有効性を判断する際には、主に以下の3つの条件を満たしているかがチェックされます。大家さんご自身の契約書がこれを満たしているか、ぜひ確認してみてください。

①特約の必要性があり、かつ暴利的でない客観的・合理的な理由が存在すること

要するに「その特約に妥当性があるか?」ということです。「通常の使用で発生する畳の交換費用」を入居者負担とするような、本来大家さんが負うべき義務を丸投げするような内容は、合理性がなく無効と判断されやすいです。

②賃借人(入居者)が特約によって通常の義務を超えた負担を負うことを認識していること

契約書の隅に小さな文字で書いてあるだけでは不十分です。「この部分は本来大家さん負担ですが、特約であなた(入居者)の負担になりますよ」ということを、入居者さんがきちんと理解している必要があります。契約時の重要事項説明などで、口頭でも説明し、理解を得ておくことが極めて重要です。

③賃借人(入居者)が特約による義務負担の意思表示をしていること

②の認識をした上で、入居者さんが「その条件を納得して契約します」と意思表示をしていることが必要です。これは契約書への署名・捺印が該当しますが、②の「認識」が伴っていなければ、形式的な署名だけでは不十分と見なされることがあります。

トラブルを防ぐ「特約」の具体例とNG例

⚠️ 【NG例】
「室内の一切の修繕は、原因の如何を問わず借主の負担とする」

これは典型的なNG例です。範囲が広すぎて曖昧なうえ、本来大家さんが負うべき経年劣化による修繕まで入居者に押し付けており、暴利的と見なされ、特約全体が無効になる可能性が非常に高いです。

⚠️ 【NG例】
「小修繕は借主の負担とする」

一見良さそうですが、「小修繕」の範囲が不明確です。1万円の修理は小修繕でしょうか? 3万円ならどうでしょう? 人によって解釈が異なるため、トラブルの元になります。

✓ 【OK例】
「以下の軽微な修繕については、借主がその費用を負担するものとする。:①居室内の電球・蛍光灯の交換、②蛇口のパッキン交換、③ふすま・障子の張替え」

このように、負担してもらう項目を具体的に列挙することが非常に重要です。範囲が明確で、かつ社会通念上「軽微」と認められる範囲に限定されているため、有効と判断されやすくなります。

そのエアコンは「設備」?「残置物」?これも特約が命綱!

特約の話で、もう一つ絶対に外せない重要なポイントがあります。それは、お部屋に残っているエアコンや照明、ガスコンロなどが「設備」なのか、それとも「残置物」なのか、という問題です。 見た目は同じエアコンでも、このどちらに分類されるかで、大家さんの修繕義務は「有る」か「無い」か、変わってきます。

設備とは

大家さんが入居者の利用のために設置し、物件情報に「エアコン付き」などと記載して募集したものです。家賃にはこの設備の使用料も含まれるため、故障した場合は大家さんに修繕義務が発生します。

残置物とは

前の入居者が置いていったものを、大家さんが「サービス品として自由に使っていいですよ」という扱いで残してあるものです。これを「残置物」として明確に特約で定めている場合に限り、大家さんに修繕義務は発生しません。

「残置物」を法的に有効にするための特約文例

契約書に、以下のような特約を記載しましょう。

第〇条(残置物について)
  • 本物件に存在する以下の物品は、前入居者が所有権を放棄した残置物であり、賃貸人はその品質・性能を一切保証しない。
  • 賃貸人は、前項の残置物について修繕義務を負わないものとする。
  • 賃借人は、自己の判断で残置物を使用することができる。故障した場合、賃借人が自己の責任と費用において修理することは妨げないが、賃貸人はその費用を負担しない。
【残置物リスト】
・洋室 窓用エアコン 1台 (メーカー名・型番など)
・キッチン ガスコンロ 1台 (メーカー名・型番など)

このように、対象物を具体的に特定し、「大家に修繕義務がないこと」を明確に合意することが、この特約の最も重要な目的です。

✓ CHECK プロからのアドバイス

正直なところ、いつ壊れるか分からない古い機器を「残置物」として残すのは、かえってトラブルの火種になりがちです。思い切って撤去するか、新品に交換して「設備」として少し家賃を上げる方が、長い目で見れば大家さんの心労も少なく、安定経営に繋がるケースが多いですよ。

管理会社との連携で差がつく!賢い修繕承認3ステップ

Step1:管理会社からの「第一報」を冷静に分析する

管理会社から「〇〇号室の給湯器が故障しました。修理見積もりは5万円です」といった連絡が来た時、「また出費か…」と捉えるのではなく、まずは冷静に報告内容を分析しましょう。

チェックポイント:

  • ・修繕の緊急度: 「お湯が出ない」など生活に必須か、それとも「網戸の小さな破れ」など、少し時間的猶予があるものか。
  • ・報告されている原因: 管理会社は「経年劣化と思われます」「入居者の使い方が原因のようです」など、どのように報告してきているか。
  • ・見積金額: 金額は妥当か。過去の同様の修繕費用と比較してどう感じるか。

この段階で「なぜこの金額なの?」「入居者の使い方はどうだったの?」といった疑問があれば、遠慮なく管理会社に質問しましょう。

Step2:写真や詳細報告で「原因」を客観的に見極める

口頭や文章だけの報告で、高額な修繕を承認するのはリスクが伴います。必ず、判断の根拠となる客観的な証拠を求めましょう。

チェックポイント:

  • ・証拠の提出を依頼する: 「判断したいので、故障箇所の写真を数枚送ってください」と依頼するのが基本です。これにより、大家さん自身も「経年劣化か、故意・過失か」という物差しで状況を判断できます。
  • ・写真から原因を推測する: 例えば、壁の穴であればその形状や場所、設備の汚れであればその付着具合など、写真からでも多くの情報が得られます。入居時の写真と見比べるのも有効です。
  • ・高額な場合は現地確認も視野に: 数十万円を超えるような大規模修繕の場合は、管理会社の担当者と日時を調整し、ご自身の目で直接確認することも重要な選択肢です。
Step3:管理会社と相談し、最終判断を下す

管理会社は、専門家として状況を分析し、選択肢を提案してくれます。大家さんの役割は、最終的な意思決定を下すことです。ここでは代表的な3つの提案パターンと、それぞれの判断ポイントを解説します。

パターン1:【大家負担】での修繕提案
💬 管理会社の提案例:
「給湯器ですが、経年劣化による故障と考えられます。こちらの修理見積もり(〇万円)で進めさせてください。」
📌 大家さんの判断ポイント:
対応の遅れは入居者の不満に直結するため、不当に高額でない限り、スピードを優先する判断が求められます。迅速な承認が、結果的に入居者の信頼維持に繋がります。
パターン2:【入居者負担】での交渉提案
💬 管理会社の提案例:
「壁の損傷は、入居者様の過失とのことです。ガイドラインを基に、費用負担のご説明をしたいと考えております。」
📌 大家さんの判断ポイント:
管理会社を代理人として立て、その結果報告を待つというスタンスが賢明です。これにより、感情的なトラブルを回避しやすくなります。
パターン3:【コスト(相見積もり)】に関する提案
💬 管理会社の提案例:
「エアコンの修理ですが、高額になるため2社から相見積もりを取りました。A社が〇万円、B社が△万円です。弊社としては、実績と価格のバランスからA社を推奨します。」
📌 大家さんの判断ポイント:
自主的に相見積もりを取り、比較検討までしてくれる管理会社は、コスト意識が高く信頼できるパートナーと言えます。もし1社からの見積もり提示のみで金額に疑問を感じた場合は、「念のため、相見積もりをお願いできますか?」と依頼するのは大家さんの正当な権利です。

まとめ

今回は、大家さんが頭を悩ませがちな「賃貸の修繕義務」について、その範囲から具体的な対応方法まで詳しく解説してきました。賃貸経営において、修繕費の発生はどうしても避けられません。しかし、そのルールを正しく理解し、賢く対応することで、予期せぬ出費や入居者との無用なトラブルは確実に減らすことができます。

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私たちアシストは、ここ清須市で長年にわたり、地域の大家さんと二人三脚で賃貸経営をサポートしてまいりました。日々の細かな修繕対応から、退去時の原状回復トラブル、リフォームのご提案、そして物件の管理委託まで、大家さんのあらゆるお悩みに寄り添うのが私たちの仕事です。

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